- 野谷文昭=編
編集協力=三倉康博今年、二〇一六年は、セルバンテスの没後四百年にあたり、それを記念してスペインでは様々な関連行事が続いた。……セルバンテスという名の恒星の周りにある四つの惑星の名前として、キホーテ、ドゥルシネア、ロシナンテ、サンチョという彼の代表作『ドン・キホーテ』のキャラクターに因んだものが、国際投票によって選ばれたという。やはり世界に通用する顔はセルバンテスなのだ。(野谷文昭・解説より)
収録内容:ドン・キホーテ(抄)/美しいヒターノの娘/ビードロ学士/嫉妬深いエストレマドゥーラ男定価:本体1,300円+税
発売日:2016年12月16日
- 「ドン・キホーテ」野谷文昭・訳
老いた郷士ながら騎士道物語に読みふけり、自らを遍歴の騎士であると思い込んでしまったドン・キホーテは、無邪気な相棒である従者サンチョ、愛馬ロシナンテとともに、恋焦がれるドゥルネシア姫(実際は近隣の村の娘)を求めて世直しの旅に出る。喜劇の中に愛と正義を織り交ぜた世界的名作が、野谷文昭による新しい現代語訳で登場! - 「美しいヒターノの娘」(『模範小説集』より)吉田彩子・訳
カスティーリャ地方の各地を踊りさすらうヒターノの人々。その中でも最も美しく聡明な少女プレシオサに、心を奪われない者はいない。とある貴族の息子である美男子ドン・フアンもその一人。恋心のあまりとうとう彼は出奔し、名前を変えてプレシオサ一行に加わることに……。身分違いの恋が引き起こす騒動を巧みに描く、短編集『模範小説集』の巻頭作。 - 「ビードロ学士」(『模範小説集』より)吉田彩子・訳
学問で身を立てることにしたトマス。頭のよさと感じのよさから様々な人の厚意を得て学業に励み、フィレンツェやブリュッセルなどヨーロッパ各地をまわる。その後サラマンカに戻って無事学士号を取得したトマスだが、彼に惚れてしまった売春婦に盛られた怪しげな薬の副作用によって正気を失い、自分の体が脆いガラス(ビードロ)で出来ていると思い込むようになる。いつしか彼はビードロ学士と呼ばれるようになり……。