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堀江敏幸 編 編集協力 菅谷憲興
文章の形式は、精緻になればなるほど全体を曖昧にし、言葉もそれにともなって揮発していく。……フローベールの言葉は、二十世紀後半以後の文学を念頭において口にされたものかと疑いたくなるほど、私にとってあたらしいものだった。釣られるように手に取った『ボヴァリー夫人』の導入部は、たしかに、支えがなくてもに浮いているという、強固さと頼りなさがひとつになった感覚をみごとに体現していた。(堀江敏幸・解説より)
収録内容:十一月/ボヴァリー夫人(抄)/サランボー(抄)/
ブヴァールとペキュシェ(抄)/書簡選定価:本体1,300円+税
発売日:2016年4月20日
- 「ボヴァリー夫人」菅野昭正・訳
恋愛小説にあこがれたエンマは、退屈で凡庸な夫との夫婦生活に飽き飽きしていた。どうして結婚なんかしてしまったのかしら? だがその閉塞感と倦怠感は、悲劇の始まりでもあった……。人妻の不倫と自殺という通俗小説を芸術の域にまで高めた「ボヴァリー夫人」は大スキャンダルを呼び、ついに裁判にまで……。フローベールの代表作。 - 「サランボー」笠間直穂子・訳
古代カルタゴ。戦争を終え疲弊した傭兵軍のリビア人マトーは、そのねぎらいの宴で、ハミルカルの娘であり巫女のサランボーに恋をする。だが彼の思いをよそに、傭兵たちとカルタゴ国との溝は深まり、とうとう反乱にまで発展することに。残虐な戦争と不毛な暴力の応酬がふたりを翻弄する。社交界に“サランボー・モード”を引き起こした、オリエンタルな情緒あふれる一作。 - 「ブヴァールとペキュシェ」菅谷憲興・訳
愛想のいいブヴァールと生真面目なペキュシェ、ばったり出会った筆耕屋のふたりは意気投合し、一緒に田舎で暮らすことにする。庭園を造ったり、医学に没頭したり、さまざまな試行錯誤をするが……滑稽に奮闘を重ねるふたりを追う描写は、まるで百科事典のよう。果たして男たちはどこへたどり着くのか。死後に発表された、フローベール未完の遺作。
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