- 多和田葉子 編 編集協力 川島隆
カフカの書いた小説は今の日本の読者には意外に身近に感じられるかもしれない。わたしたちは近い将来、何も悪いことをしていないのに逮捕されるかもしれないし、拷問を受けるかもしれない。そんな時にカフカを読んでおけばきっと役に立つ。(多和田葉子・解説より)
収録内容:変身(かわりみ)/祈る男との会話/酔っぱらった男との会話/火夫/流刑地にて/ジャッカルとアラブ人/お父さんは心配なんだよ/雑種/こま/巣穴/歌姫ヨゼフィーネ、あるいは鼠族/訴訟/公文書選/書簡選 定価:本体1,300円+税
発売日:2015年10月27日
- 「変身(かわりみ)」多和田葉子・訳
グレゴール・ザムザが目を覚ますと、その姿はばけもののようなウンゲツィーファー(生け贄にできないほど汚れた動物あるいは虫)に変わっていた。困惑する本人とその家族だが、その心うちも徐々に変化していく。一家の稼ぎ頭であった長男(セールスマン)が突如要介護人となり、頼りにしていた家族は、一転して彼を邪魔に思い始め……。現代社会の歪みをあぶりだすカフカの代表作が、作家・多和田葉子による清新な新訳で登場。 - 「訴訟」川島隆・訳
「何もしていないのに」突然逮捕され、起訴されたヨーゼフ・Kは、謎の裁判制度に振り回されて追い詰められる。この正体不明の裁判所とは一体何なのか? またKの運命は? さまざまな解釈を施されてきた不条理文学の真骨頂であり、カフカの死後、友人らによって出版された未完の遺作。 - 「公文書選」川島隆・訳
カフカはサラリーマンとして勤めながら執筆する兼業作家であった。労働者災害保険局で働いていた時の、彼が書いた公文書を収録。一見普通の無味乾燥なお役所文の中にもカフカらしさが透けて見え、近年、文学作品として注目されている公文書に読めるが、時折混ざる辛辣なユーモアはまさにカフカ、じわじわくるマニアックな面白さがたまらない。
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