- 辻原登=編 編集協力=中和彩子
物語は文章そのもの(文体)によって成立する。文体は、文章の外側にある現実には依拠しない。優れた物語作者だけが文体を持つ。文体は定義付けることも、分析することもできない。……スティーヴンソンの文は物語内の現実を動かし、変容・変貌させる。ジーキル博士は自ら調合した薬液を服んでハイドに変貌し、又薬液を服んでジーキルに戻るのだが、ついに永遠にハイドに変容してしまう。それは薬液によってではなく、文の力即ち文体によって引き起こされる……。(辻原 登・解説より)
収録内容:ジーキル博士とハイド氏/自殺クラブ/噓の顚末/ある古謡/死体泥棒/メリー・メン/声の島/ファレサーの浜/寓話(抄)/驢馬との旅定価:本体1,300円+税
発売日:2016年5月20日
- 「ジーキル博士とハイド氏」大久保譲・訳
弁護士アタソンは悩んでいた。旧友のジーキル博士から作成を依頼された遺言状が何とも奇妙なものだったからだ。“逝去の場合、もしくは失踪・原因不明の不在の場合、エドワード・ハイドがただちにその財産を相続するものとする”。このハイドという謎の人物は、凶暴で嫌悪感をもたらす男だった。ジーキルは脅されているのか? 何か事情があるのだろうか? 友の真実を明かすべく、アタソンは調査に乗り出すが……。元祖二重人格小説ともいえる、人間の善悪の葛藤と苦悩を描いた、怪奇小説の代表作。 - 「驢馬との旅」中和彩子・訳
南フランス・セヴェンヌ地方にやってきた作家スティーヴンソン。小さな雌驢馬を65フランとブランデー1杯で買い求めてモデスティンと命名し、のんびり徒歩の旅が始まった。 道を間違えたり、修道院で口論をしたり、歴史に思いをはせたり、星空の下で眠ったり。ひとりと1頭の、ユーモアと旅情が詰まった紀行文。 - 「ファレサーの浜」中和彩子・訳
商社の社員として、南海の島に派遣された英国人ウィトルシャー。軽い気持ちでウマという女性を現地妻にするが、その気高さと美しさに心を打たれ、彼女を本当に愛するようになる。だがある日、彼は自分が他の島民たちから冷遇されていることに気づく。もしや自分は島のタブーを犯したのか? その背後にいた者とは……。スティーヴンソンが自画自賛したという、南海情緒豊かな愛とスリルの冒険活劇。
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