第一部の座談会では、編集委員のみなさんが解説の執筆を担当している巻の話題を中心に、それぞれ印象に残った作品などに触れながら、本全集の意義や特徴を語った。
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『女性たちの戦争』(第14巻)の解説を担当する川村さんは、これまで戦争文学を考えるとき、実際に戦争を経験している作家の作品を読むことが多かったが、今回、様々な作品を検討し、本全集を編む中で、自身の戦争への捉え方が変化したという。それは、アジア太平洋戦争以降に生まれた私たちも戦争を何度も経験してきたのではないかといった思いだ。朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争など、日本は基地の問題や金銭的援助を含め、前線ではないが、常に銃後の役割を果たし戦争に関わってきたと言えるのではないか、そのような捉え方で作品選びを行ったと語った。
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『9・11変容する戦争』(第4巻)の解説を担当した高橋さんは、収録されている岡田利規「三月の5日間」を挙げ、イラク戦争が始まり、アメリカが大規模攻撃を終了するまでの五日間、渋谷のラブホテルで過ごす若い男女を描いたこの戯曲から、現代の若者が戦争をどのように受け入れているかが見えてくると指摘した。そこには、戦争が普段の生活や恋愛と等値にある、つまり戦争だけが特別な問題ではないという認識があるとともに、戦争はどこにでもあるといった状況も描かれているという。シンポジウム当日は、9・11のアメリカ同時多発テロの10周年にあたったが、戦争がいつ、どこで起こるかわからないといった遍在性は、9・11以降に強まり、それがこの戯曲に現れていると語った。
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プログラム | |
9月11日 |
第1部 編集委員による「戦争と文学」座談会 浅田次郎/川村湊/高橋敏夫/成田龍一 司会/陣野俊史(文芸評論家) 第2部 立花隆講演会 「次世代に語り継ぐ戦争」 |
■ 第1回 広島会場の様子はコチラです。 ■ 第2回 長崎会場の様子はコチラです。 ■ 第4回 大阪会場の様子はコチラです。 |