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戦争文学には、戦争のなかでのあらゆる経験──戦闘をはじめ、人間関係や日常の細部までが描き出されるが、「戦時」においてはその報告であるとともに、「戦後」に書かれたものは戦争の総括となる。そのため、戦争文学は書かれた時期との緊張関係を絶えず持ち、単なる証言の域をこえて、「戦時」と「戦後」の営みを一挙に照らしだす存在となっている。アジア太平洋戦争が記憶の領域に入り込みながら、他方、あらたな戦争が生起しているなか、戦争文学が書き続けられ、読まれ続けなければならない理由がここにある。
1951年大阪府生まれ。著書に『大正デモクラシー』、『戦後思想家としての司馬遼太郎』、
『「戦争経験」の戦後史 語られた体験/証言/記憶』等。 |
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集英社の創業85周年記念企画として戦争文学の全集を考えているが、その中にエンターテインメント作品も収録したいという話を聞いたとき、画期的な企画だなと思った。これまで戦争文学の全集、叢書は幾度か刊行されてきたが、エンターテインメント作品も視野に入れたものはなかったと言っても過言ではない。初の試みである。実はミステリーやSFなどの大衆小説の分野でも戦争をモチーフにした作品は数多く書かれていて、傑作も少なくないのだ。そういう作品までをも対象にするとはとても嬉しい。
1946年東京都生まれ。76年、椎名誠氏らと「本の雑誌」創刊。
著書に『冒険小説論 近代ヒーロー像100年の変遷』(日本推理作家協会賞)等。
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