週末の広島市・平和記念公園には炎天下にもかかわらず家族連れの姿が多く見られ、戦争や原爆に対する広島市民の関心の高さが感じられた。広島平和記念資料館地下のメモリアルホールで開かれた「次世代フォーラム」は、ほぼ満員となる盛況ぶりを見せた。
初日の23日、午後1時から始まった第1部は、立花隆さんの講演「次世代に語り継ぐ戦争」。自身と広島との関わりに始まり、近年精力的に取り組んでいる、戦争の記憶を保存するための活動に触れ、ドイツ、イギリスなど世界各地の戦争ミュージアムの充実ぶりと日本の現状を引き比べ、「戦争体験者が消えてしまう前に、戦中を肌で知っている世代の責任として、戦争の記憶を残していかなければならない」と90分の講演を締めくくった。
第2部は編集委員の川村湊さん、成田龍一さんの対談。各巻のテーマ設定、作品選定の意図などを語り、特に第19巻『ヒロシマ・ナガサキ』では被爆の体験記録にとどまらず、核兵器の問題、原発の問題まで広く視野に入れて作品選定をしたことなど、編集委員ならではの舞台裏を明かした。
翌24日は、まず毎日新聞広島支局記者・矢追健介さんが「黒い雨」に関する数年分の取材成果を報告し、いまだに黒い雨の被害者が被爆者として認定されない現状を訴えた。続く「『戦争×文学』読み方講座」では、毎日新聞大阪本社専門編集委員・広岩近広さんが川村さんに公開取材を行った。本全集の特徴の一つとして、反戦と戦争礼賛の作品が混在していることに話が及ぶと、川村さんは、「本全集はもちろん反戦の意図のもとに作られたが、ただ戦争反対と唱えるのではなく、両極のテキストを同時に提示することで、戦時下の空気そのものを感じ、なぜ戦争が起きたのか、文学が体制に利用されたときに何が起こるのかについて考えてほしかったためだ」と語った。
2日間とも、聴講者の年齢層は幅広く、しかも老若問わず熱心にメモをとる人が目立ち、広島市民にとって「戦争」がいかに重く、現在的なテーマであるかがひしひしと伝わってきた。
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