荒くれ者たちへの憧れ ロックンロール梁山泊 北方謙三×綾小路 翔

大きな盛り上がりを見せる、北方謙三と氣志團・綾小路翔のトークライブ。最後の第3部ではファンから寄せられた質問に、2人が回答。物語の世界観にまつわることやキャラクターについてなど、コアなファンならではの疑問を徹底解決!

登場人物の名前を覚える必要はない!

Q:北方先生は氣志團にどのような印象を持っていましたか?

北方:リーゼントに学ラン姿で、「なんだか変な奴らだな」と感じたのが第一印象。ただ、それが彼らにとっての“衣装”なのだと思ったら、「この人たちは何を言いたいんだろう。何を伝えたいんだろう」と、興味が止まらなくなりました。そしていざ曲を聴いてみると、凄くしっかりした作品作りをしていることがわかり、一気に引き込まれてしまいましたね。

Q:綾小路さんは「水滸伝」のどのようなところに魅力を感じていますか?

綾小路:もともとツアー中は、移動の際に本をよく読んでいたのですが、北方先生の「水滸伝」は、ライブ前などに読むと物凄くモチベーションが上がるんです。魅力はとにかくキャラクター。あれだけ多くの人物が登場する物語なのに、それぞれの過去や背景が重厚に描き抜かれていて、誰に感情移入しようか迷ってしまうほど。ライブの時は、その中の誰かになりきって本番に臨んだり、あるいは親しい友人を重ね合わせたりすることもありますね。とにかくいつも、寝食を忘れて夢中になって読んでいます。

Q:普段あまり本を読まない人は、「大水滸伝」シリーズをどう楽しめばいいでしょうか?

北方:このシリーズを手にしたものの、「途中で挫折しました」と言う人がたまにいます。そういう人たちに共通するのは、登場人物の名前をすべて覚えようとしていること。でも、それは無理です。作者の私ですら、すべての名前を暗記しているわけではないんですから(笑)。あまり気にせず、サクサクと読み進めていただき、その中で自然と名前を覚えられたキャラクターこそが、その人にとっての大切な人物なんですよ。

綾小路:僕の周囲はどうしても、あまり活字を好まない人が多いのですが(苦笑)、これだけ多彩なヒーローが出て来る物語は、誰にとっても面白いはず。「とにかく騙されたと思って読んでみろ」といつも言っていますし、とくにハマりそうな人には、無理やり全巻プレゼントすることもあります。布教活動に勤しんでいるつもりはないのですが、この世界観に夢中になる人は、きっとまだまだ増えていくと思いますね。

ファン待望、「やつら」シリーズの今後は……?

Q:多くのキャラクターが命を落としていく物語ですが、北方先生にとって、最も別れが惜しかったのは誰ですか?

北方:それは、これまで死んでしまったキャラクター、全員です。とくに思い入れのあるキャラクターが死んだ時は、ひとり弔い酒をするんです。以前にあるお酒のイベントで、「どんな時にお酒を飲みたくなりますか?」と聞かれた時、「人を殺した時です。ただし、紙の上でね」と答えたら、後半部分をカットされて偉い目にあいました(笑)。

Q:公式サイトで不定期連載されていた、死亡したキャラクターと北方先生が語り合う「やつら」シリーズ。続きを書く予定はありますか?

北方:「やつら」シリーズは、私が自発的に書いている作品です。つまり、原稿料も何ももらっていないわけですから、書きたい時に好きなように書かせてください(笑)。

Q:綾小路さんにとって、これまで最も胸が熱くなったシーンは?

綾小路:たくさんあるので難しいですが、一番衝撃的だったのは、前半戦の楊志が殺されてしまう、最後の大立ち回りでしょうか。「父を見ておけ。その目に、刻みつけておけ」という名台詞には、思わず男泣きしてしまいました。

北方:水滸伝の原典は、108人全員が揃うまで誰も死なないんです。だからこそ、「俺は違うよ。必要があれば構わず殺すよ」という意思表示でもあったんですよ。

北方謙三&氣志團、夢のコラボは実現するか!?

Q:北方先生がもし氣志團に入るとしたら、どのポジション、どのイメージカラーがいいですか?

北方:黒で、センターかな(笑)。私は音痴なので歌えませんけど、「かかってこいや、喧嘩上等!」なら言えます。

綾小路:ちょうどいいですね。うちのメンバーにはまだ黒がいませんし、センターというのもいないですから。

Q:北方先生と綾小路さんは共に、月は違いますが2人とも26日生まれ。これは誕生日占いによると恋愛下手が多いそうですが、ぜひそれぞれの恋愛観を教えてください。

北方:この年齢まで生きてきて、ちゃんとした恋愛をどのくらい経験したかというと、おそらく2~3度くらいのもの。もちろん、いわゆる行きずりの関係というのは無数にありますが、本当の意味で人が人を愛せるのは、そのくらいでしょう。

綾小路:女性は好きですけど、恋愛はあまり得意ではありません。相手を口説いたりすることもまずできないので、実はそれがバンドを始めた動機に繋がっているんです。自分から女の子にアプローチできないので、バンドブームに乗っかってモテようという、凄く不純な動機でした。ただ、かっこいいバンドやミュージシャンはすでに大勢いたので、だったらどこか格好悪い、おかしな集団をやろうというのが、氣志團の元になっています。

Q:最後に、これを機会にお2人のコラボレーションが見られる可能性は? たとえば、北方先生が氣志團の曲の歌詞を書いたり、氣志團が水滸伝のテーマソングを作ったり……。

綾小路:面白いけど、これはそう簡単なことではないですよ。小説と歌詞では使っている言葉がまったく異なりますからね。生半可なものを書いて彼らに迷惑をかけるわけにはいかないし、いざ書いてみたら私の嫌いな刹那ロックになってしまっているかもしれません(笑)。

北方:どちらも恐れ多いですが、実現すれば本当に夢のような話ですよ。僕としてはぜひお願いしたいですが……!

残念ながら、時間の都合で2人のトークライブはここで終了。だが「大水滸伝」の物語と同様に、今回のトーク内容がいつまでも来場者や、本稿を読んでくださった方々の心に残り続けるようなら幸いです。2人のコラボが実現するか、乞うご期待!