──主人公である勘一さんは今年で86歳を迎えますが、読者としてちょっと心配です。
 勘一は、90までは確実に生きるだろうと思いますよ。実際、95歳でも元気でかくしゃくとしている方って、けっこういらっしゃいますので。その前に僕のほうが死んでるかもしれない(笑)。それは分からないですけど、ある程度物語が落ち着いたところで、『東京バンドワゴン イエスタデイ』という形で、過去にさかのぼって、堀田家の歴史を掘り起こすのも悪くないなと思っているんです。
 今回、勘一の父親の草平や祖父の達吉のことにも触れていますが、その時代を描くのもいいなあと。もちろん、そのときまでこのシリーズが続いていればの話なんですが、そのための布石はいろいろ考えて書いているつもりです。
 今回の物語は、言ってみれば、7作目の『レディ・マドンナ』と対をなす物語なんです。『レディ・マドンナ』は、タイトルどおり、堀田家の女性たちを前面に出した物語。それに対して今回は勘一であり、我南人であり、研人でありという男たちの系譜を前面に出した物語にしました。もちろん普段から彼らは主人公ではあるんですが、その思いを少しだけ強く前面に出した。彼らが歩んできた、「長く曲がりくねった道」が、これからも続いていくだろうし、そこには若い連中も乗っかっているんだよと。研人であり、花陽であり、かんなであり、鈴花であり、彼らの若い世代が、その道をどんどん切り開いていくんだよという流れの物語なんですね。
 僕としては、このシリーズを堀田家サーガとして、あと30年でも書き続けたい思いはあります。面白い仕掛けをたくさん用意しますので、10周年以降の堀田家にも、どうぞ乞うご期待、よろしくお願いします(笑)。