──幼稚園のちびっ子組が活躍する一方で、研人くんが音楽で大人の仲間入りをする出来事も起こります。
 研人はもう高校生です。高校生でも世の中には、インディーズで才能を発揮する連中はワヤワヤいますから。その中に研人も滑り込ませようと思ったんですね。その研人の上には、当然、我南人がいるわけだし、鈴花とかんなのお節介の上には、当然、勘一がいる。そうして、それぞれの人生がずっと続いていく。それが堀田家の『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』です。

──もう一つ、この物語の要は、堀田サチという死者が語っていることだと思います。物語全体がすでに亡くなった人の慈しみに包まれている。これは作品の大きな魅力です。
 ええ、すでに死者である堀田サチの存在、目線はすごく大事です。と同時に、その目線をテレビカメラのような視点で切り取っているから、成り立つ小説でもあるんですね。現実問題として、亡くなったばあちゃんがずっといて、紺や研人には時々その姿が見えてしまうというのは、けっこう困ることでもあるわけです。
 でもこの物語はサチの視線をテレビカメラとして扱っているのでバランスが取れているんです。だから、そのバランスには常に気を使っています。今回の鈴花とかんなが活躍する話では幽霊騒ぎが起こりますが、どこまでばあちゃんの堀田サチが関わるか。あの場面も、じつは相当気を使いました。生者と死者のバランスを考えて、ここまでは大丈夫かなとか、今まで連綿と10年間やってきた、堀田家の物語の枠内からはみ出さないように注意しました。