──何といっても、今回のメインイベントは、堀田家の秘密の蔵書を巡って、勘一御大、我南人たちがイギリスに繰り出す大仕掛けです。
「10周年なので、何か特別1本でかいものをやろうか」と担当編集者さんと話していて、「じゃあ、イギリス行っちゃおうか」ってことになりまして。事の発端は、『007』ばりのイギリスの諜報員が堀田家にやってくるわけですが、そこはテレビドラマ的に面白おかしく、これぐらいやってもいいだろうと大風呂敷を広げました(笑)。
──しかもロンドンでは、あのキース・リチャーズの特別出演も用意されている。
以前、我南人の「親友」として物語に出てきていますので、それが伏線となって、今回はキースがロンドンで大活躍する。こんな展開は前にはまったく考えていませんでしたけど、出しておいてよかったなと(笑)。前の話の中で、我南人の音楽的才能をキースが認めているという大前提があるからこそ、今回の話も生きてくるわけです。キースならアメリカでもイギリスでも、どこでも物語に登場できますからね。
それもこれも10年間やってきたおかげで、いろんなキャラクターがいて、いろんなシーンを作ってきたからこそ、こういう仕掛けもできるんだなって、しみじみ思いますね。
──堀田家の醍醐味、わいわい騒がしい食事風景も、巻を追うごとに筆がノッてきていますね。
最初は誰が何をしゃべっているのか、それを表現するのに苦労しましたが、さすがに10年もやると、こなれてきますね。かんなと鈴花という子供たちが増えたことで、ちょっと楽になりました。この2人のしゃべりで、躍動感も出るし、今の堀田家の中心はここなんだという家族の関係も鮮明に出せる。家族の会話って、子供ができるとどうしても子供たち中心になるんですよね。堀田家の今がまさにそんな感じです。