ネガティブな評価があったとしても、
もう慣れてるでしょ?
写真について振り返ることは、思い出を語ることと同じなのかもしれない。
令和ではなく平成だった頃のこと。当時の日本で一番写真を撮られたであろうショートカットの少女が、革命を起こしていた。CMに、テレビドラマに、そして写真集に。高知県の大自然で育まれた天真爛漫な少女の笑顔は、ポスターとなって全国津々浦々の中学・高校の部室に貼られ、街角に飾られたポスターは盗まれた。アイドル的な人気を超えた、もはや社会現象とも呼べる熱狂だった。
その少女こそ、広末涼子。
あれから四半世紀がすぎ去った令和のいまのこと。女優であり、3人の子どもの母親であり、40代の女性でもある彼女が写真集をリリースする。タイトルは、『C'est la
Vie』。「セラヴィ」と読み、直訳するのなら「これが人生」という意味。タイトルに込められた想いも気になるが、まず最初に尋ねたかったのは、『C'est la
Vie』のプロジェクトがいかにして始まったのかという、その裏側について。
私とシンクロするかのように
写真を撮ってくれた一枚
ふたたび、『C'est la Vie』のプロジェクト記録を振り返ってみる。
2019年の初期プランとしては、2020年夏頃に知床半島などの壮大な自然の中でのロケ撮影をし、同年の刊行を予定していた。けれど、そのプランは実現しない。2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症への対策により、同年4月7日に緊急事態宣言が発出されたからだ。
本格的なコロナ禍の始まりである。
「ステイホーム」が合言葉となり、都道府県を移動することへの自粛が促された。その影響は当然避けられず、ロケでの撮影や出張なども全面的に禁止となっていった。様々な経験を重ねてトラブルさえも逆手にとってきたスタッフですら、アイデアを絞っても打破できないというはじめてのジレンマ。ロケ撮影ができないならどうしたらいいのか? 打ち合わせは続くが答えが出ない。それでも、2020年の7月18日から撮影がスタートしたのは、その日が広末涼子さん40歳の誕生日だったからだ。
シックにコーディネイトされた大きな花束を抱えて、花束よりも大きな笑顔の彼女。
『C'est la Vie』のプロローグを彩る幾枚かの笑顔たち。実は、これらの写真は『C'est la
Vie』に収めるためではなかった。14歳のデビューから彼女を支えてきたスタッフから、撮影という名のプレゼントだった。撮影場所は、浅草のハウススタジオ。40歳の誕生日だからこそ「写真館で撮るような人生の記念日を彩る一枚を」がコンセプトであり、デジタルの時代に、あえて8×10の大型フィルムでの撮影も試みられたのは、この狙いのためだった。「どこにもいけない、なにもできない、それでもなにかをはじめたい」という願いも込められていた。
北海道・知床半島から東京・浅草へ。大自然からハウススタジオへ。撮影場所やプランは変わったし、そもそもその写真は『C'est la
Vie』のための一枚ではなかったけれど、家族に背中を押された広末さんは、もう迷わず、真摯にこの写真集と向き合っていく。
当初の予定では、写真集は、『ヒロスエの思考地図 しあわせのかたち』というエッセイ集と2冊同時発売が計画されていた。けれど、久米島ロケの2度にわたる中止・延期。スケジュールも含めた今後のロケ撮影の見通しもたたないため、あきらめざるを得なくなったのだ。
だが、その瞬間に『C'est la Vie』は〝ドキュメントな写真集〟となったのかもしれない。期せずしてではあるけれど、よりゆっくりと時間をかけることが許された一冊に。
写真について振り返ることは、思い出を語ることと同じであった。
平成の当時、日本で一番写真を撮られたであろうショートカットの少女が、40代の女性としてリリースするドキュメントな写真集の名は『C'est la
Vie』。「セラヴィ」と読み、直訳するのなら「これが人生」という意味だ。インタビュー現場で写真と思い出について振り返ってくれた広末さんが、タイトルに込められた想いを教えてくれた。
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