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WOWOW×Lemino 連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』で
史進役を務める木村達成が、原作小説『水滸伝』を読む!

馬と築けた信頼関係
──五巻、いかがでしたか?
木村 すばらしかったですね。巻を追うごとに面白くなってきたという感じです。
たとえば、童威と童猛の決死隊が敵陣の中に留まって踏ん張る。公孫勝の致死軍がそこに入っていって戦うんですが、敵が多すぎて倒しても倒しても減らない。そんなところに林冲の騎馬隊が現れます。
「豹子頭林冲、着到。梁山泊の騎馬隊の力を見せてやるぞ」
(北方謙三『水滸伝』第五巻「玄武の章」集英社文庫 p115)
シビれましたね。林冲が率いる騎馬隊が本当にかっこいい。
ドラマではまだ馬に乗って戦うシーンはそんなには出てきていないから、とくに想像するのが楽しかったですね。ドラマでもこれからこういう場面がきっと出てくると思うんですけど。
騎馬の戦いって映像で描くのが難しいと思うんです。でも北方先生の描写は頭の中にパッと騎馬戦がイメージできて、気持ちが上がるんです。前回お話しした打ち上げの席で、北方先生にそう伝えたら、「俺は書き手だからな」って笑っていらっしゃいましたけど。
──馬に関しては、木村さんも乗ってアクションすることが大変だったとおっしゃっていましたね。
木村 今まで馬はそんなに身近ではなかったんですが、『水滸伝』の撮影にあたって、撮影でも乗ったコロラドという馬とだいぶ仲よくなりました。
実は林冲役の亀梨(和也)さんが乗っていたワラワラという馬にも乗ったことがあったんです。ところが、その時に振り落とされたんですよ(笑)。コロラドに慣れた頃だったんですが、ワラワラとは相性が悪かったのかな。馬はそれぞれ性格が違うし、本当に賢い。乗り手を見るんです。ワラワラは亀梨さんが乗っているときは従順でした。
僕が乗っていたコロラドは少しびびりな性格なんですけど、「行くぞ」って言ったら行ってくれる。その信頼関係みたいなものが築けたのは、ドラマの『水滸伝』に参加して得た大きな収穫のひとつでした。
たすきをつなぐ、思いをつなぐ
──林冲といえば、ライバル関係ともいえる公孫勝とのやりとりもありましたね。
木村 「豹子頭林冲、着到」の後、敵のトップを討ち取って戦に勝ったあとの公孫勝とのやりとりですね。
馬から降り、林冲が言った。
「今度ばかりは、おまえの騎馬隊の速さが、身にしみるほど嬉しかった」
(北方謙三『水滸伝』第五巻「玄武の章」集英社文庫 p117)
四巻で二人が言い争った場面がありました。
林冲が戦場に駆けつけて公孫勝の致死軍を救うんですけど、林冲が公孫勝に「なぜ、私の到着を待たなかった」と言う。公孫勝は、致死軍はほかの誰も当てにせず、当てにされる軍だと言い、林冲はそれが傲慢だと言う。公孫勝は誇りの話をしているんだって言っていました。
でも、ここでは少し公孫勝が軟化して、林冲に素直に礼を言っている。この二人のやり取りは本当に熱い。
林冲ってぶっきらぼうなのに、いろんな人と交流があって、熱いものを感じさせるキャラクターですよね。
──林冲は、五巻の最後で楊志の遺児、楊令を託されます。そういう意味でもこれからますます活躍が期待できそうです。
木村 楊志の心が林冲を経由して楊令に受け継がれていくんでしょうね。
「頼むぞ、林冲。楊志の息子のこともな」
(北方謙三『水滸伝』第五巻「玄武の章」集英社文庫 p381)
林冲は妻の張藍を亡くしてから、自分を痛めつけたり、死に急ぐようなところがありました。その林冲に晁蓋は、楊志の跡を継いで二竜山を率いることを命じ、楊志の大事な息子を託す。そうすることで、晁蓋は林冲に死ぬなと暗に言っている。そういう思いがあることがいいですね。五巻は誰かが誰かに何かをたすきでつないでいく感じが、すごく出てきました。
──公孫勝も少しずつ変化しているようですね。初登場時は血が通っていないような冷たさがありましたけど。
木村 公孫勝と童威が口論するシーンが好きですね。
「豹子頭林冲、着到」よりも少し前の場面になりますけど、宋江が官軍に包囲されていて、なんとか敵陣に穴を開けたい。でも、膠着状態になっている。何度攻撃を仕掛けてもだめ。
そこで童威が双子の弟の童猛と決死隊を組んで、敵陣に留まり続けるという提案を公孫勝にします。公孫勝はそんな危険なことはさせられないと言うんですが、考えを変えます。
「それなら、やって貰おう。いまから攻めこみ、できるだけ深く押し、おまえたち兄弟を残して、われわれは離脱する」
「おうよ。受けて立とうではないか」
「間違えるな。敵は私ではないぞ」
「なんとなく、敵みてえな面してんだよ、あんた。笑わねえし」
「行くぞ。いいな。弟と話し合わなくてもいいのか?」
「そこが、双子よ。なぜだか、お互いの気持はわかる。言葉なんて、いらねえんだよ」
(北方謙三『水滸伝』第五巻「玄武の章」集英社文庫 p111)
まったく違うタイプの二人が言い合うんですけど、意見をぶつけ合いながら、相手の本気を探っているようにも思えて、緊張感がたまりませんでした。
繊細さを感じた楊令と犬の姿
──話は変わりますが、先ほど、ドラマの打ち上げの席での北方先生とのやりとりについてのお話が出ました。北方先生は二話での史進の暴れっぷりをとても気に入っていたそうですね。
木村 それは本当に嬉しかったですね。そういえば、北方先生に「史進なのに案外丁寧なんだな」って言われたんですよ(笑)。失礼があってはいけないと思って丁寧な言葉遣いを心がけていたんですけど、どんなふうに見えていたのかなって。あとで周囲の人に聞いたら、先生の脳裏には、もっと尖っている若手俳優がイメージされていたんじゃないかと言われました。僕は史進とは全然違います(笑)。でも、北方先生が僕の史進のようなエネルギーに共感してくれたのは嬉しかったですね。
──五巻で印象的だった北方先生の文章はどんなところでした?
木村 楊令と犬の白嵐が遊んでいるところですね。北方先生はこう書いています。
(北方謙三『水滸伝』第五巻「玄武の章」集英社文庫 p138)
北方先生の文章表現って本当に繊細だなと思いました。きゅんとするんですよ。“漢”たちの生きざまをこんなに豪快に書く人が、犬と人間の交流をこれだけ優しく温かく書く。そのギャップがいいんです。
実際にお会いしてみると、男女の交流とか、情熱的な部分に対してすごくストレートな思いを持っている方だと感じました。スペインがお好きだとも聞いて、あー、なるほどと思ったんですが、ちょっとラテンな感じがあるんですよね、たしかに。李富と馬桂のラブシーンの生々しさも、そういうところから来てるのかなと。
──馬桂については五巻で楊志暗殺に深く関わりますね。
木村 僕はどこかで李富を裏切ってくれるんじゃないかと期待していたんですけどね。楊令と白嵐が仲睦まじく一緒に育っていく姿を見て、馬桂の考えが変わるような展開になったらいいなと。
でもそんなに甘くはなかったですね。北方先生は真っすぐに馬桂を楊志暗殺に協力するように進ませました。個人的には残念でしたけど、それが北方先生の世界なんだと納得しました。
第9回[了]
ヘアメイク/齊藤沙織 聞き手・構成/タカザワケンジ



