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WOWOW×Lemino 連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』で
史進役を務める木村達成が、原作小説『水滸伝』を読む!

『テニミュ』時代の僕は
史進 だった
──前回からの続きで、史進の話をしたいんですが、魯智深は少華山を朱武たちに任せて、「まだ大事なものが育ちきっていない」史進を連れて王進先生のもとへ向かいます。
木村 史進が王進先生と王母様に久々に会った場面は泣けるシーンでもあるんですけど、僕はちょっと笑ってしまいました。少華山の史進とギャップがありすぎて。
『冷たい手をしている、おまえは。なにかに、温かさを奪われたように』
史進は、大きな躰を縮め、膝に涙を落とし続けている。」
(北方謙三『水滸伝』第三巻「輪舞の章」集英社文庫 p248)
愛くるしいですね。
──史進は真っすぐ過ぎる性格ですね。
木村 王進先生との会話がまたよくて、すごく刺さったんです。
『なぜでしょうか。私は、以前よりも強くなったと思っております』
『おまえは、弱い』
『強いと、先生はおっしゃいました』
『強いが、弱い』」
(北方謙三『水滸伝』第三巻「輪舞の章」集英社文庫 p252)
前回、史進の気持ちがわかるって言いましたけど、僕にもこの時の史進と同じような時期があったんです。
二十歳前後の頃、まだ自分よりも上だと感じる人に出会っていないと思い込んでいて、根拠のない自信みたいなものがぶわーっと出過ぎていたんです。それで突っ走り過ぎてしまうことがありました。
作品で言うと舞台の『テニミュ』(ミュージカル『テニスの王子様』)の時です。周りの人に「おまえらと仲よしごっこをしているつもりはないから」みたいなことを平気で言っていました。
──まさに史進ですね。ついてこられないならやめちまえ、みたいな。
木村 マジでそうでした。『テニミュ』って、舞台稽古の前に合宿があったんです。それがとんでもなくきつかった。テニスはもちろんですけど、基礎体力をつけるために走らされたりしていました。
でも、僕は走りでも何でもいつも一位だったから、できないやつの気持ちが分からなかったんです。できないやつとペアを組まされて「助け合いって何なん? 意味あんの?」って思っていました。それっていま考えるとバカだからなんですよね。史進もバカなんですよ、そういう意味で。
──史進はまだ成長の過程にあるんですよね。『水滸伝』を通して成長していくキャラクターです。
木村 『水滸伝』には成長のために必要なことがちゃんと書かれているんですよね。王進先生に言われて武松と対決するシーンも好きです。
史進は棒を使いますが、武松は拳だけで応戦して史進を瞬殺。史進の棒と自信がへし折られます。でも、このシーンもドラマ版にはないんです。やりたかったですね。本当に残念です。
この流れですごく印象的だった言葉が、王進先生の「おまえは強いが、強さを拠りどころにしすぎる。強さに頼りすぎる。それが、おまえの弱さなのだ。強さがすべてと考えている弱さ。それがわからぬか」(p255)。
史進はその言葉の意味がわからない。それで王進先生のところでしばらく修行することになります。
強い人間が「強さの弱さ」に気づくには、時間がかかるんですよ。僕もいまになって、二十歳頃の自分は何もわかっていなかったなって思います。
土煙の中、
上半身裸で馬を走らせた
──第三巻を読んだのは『水滸伝』の地方ロケの時だったそうですね。
木村 そうです。まとまった空き時間があったので集中して読めました。
それに三巻は史進が出ている場面も多かったので読みやすかった。「史進、もっと行け! もっと行け! あ、もうこんなに読んでる。読み終わっちゃうな」という感じでした。撮影現場にいると読みやすいんだなって思いました。
ずっと部屋に籠もりながら読んでました。せっかく地方に来ているのに、部屋に籠もって本を読んでるって何なん? ってちょっと思いましたけど(笑)。
──ロケでの撮影はどうでしたか? 馬が言うことを聞いてくれなかったとおっしゃっていましたけど。
木村 土煙が上がって目の前をふさぐんですよ。周りが何も見えない状態で突っ込んでいかなくてはならないので。
──馬も怖かったんでしょうね。
木村 馬は相当怖がっていました。何回も脚が止まって、あっちには行きたくないというシグナルを思いきり出していました。あまりに走らないので、途中で一度乗り手をプロの方に代わってもらったんですけど、それでもやっぱり前に進んでくれない。「これ、僕が問題ってわけじゃないんだな」と思いました。
掛け声を何度もかけて、悪いなと思いつつおなかを蹴らせてもらって、なんとか前に進めるというのを繰り返していたら、最後にようやく走ってくれるようになりました。
大変でしたけど、最終的には集中し過ぎずに走らせることができたというか、緊張感を保ちながら走ることができたのはよかったと思います。
──しかもただ乗るだけではなく、史進の得物、長くて重い棒を持って走らせるわけですよね。
木村 前にも言いましたけど、史進の棒は本当に重いので、馬に乗りながら振り回すと、身体がぶれまくる。超危ないんですよ。今後もそういうシーンがたくさん出てきそうだから、慣れなくちゃいけないんですけど。何気なく映画やドラマを観ているとあまり感じませんが、馬上で棒や刀を振るのは本当に難しいんだと実感しました。
しかもエキストラの方がたくさんいる大規模な撮影だったので、自分と馬のことだけじゃなく、全体としてうまくいっているのかなという心配もありました。最終的には開き直って、馬から落ちなきゃいいやぐらいの感覚でやるしかなかったですけど。
──ほかにはどんなシーンを撮ったんですか。
木村 父親の史礼が亡くなった後のシーンも撮りました。
田んぼを見ている史進に史礼が話しかけるんです。
「二日も豪雨が続いたからな…川が氾濫して水田へ流れ込んだのではないかと心配だったが、大丈夫そうだな。なぁ? 史進?」(第6話より/脚本:藤沢文翁)
振り返ると史礼はもういないんです。幻だったんですね。
田んぼにカエルが跳ねて、水面を風が渡っていくようなすごくいい風景の中での撮影でした。カエルを捕るのもスタッフさんを手伝って一緒にやったりもしました。
──切ないシーンですね。どのぐらいの期間いらっしゃったんですか。
木村 一週間ぐらいですね。撮影そのものは三日ぐらい。史礼が亡くなる前の、史家村から王進先生と王母様が旅立っていくシーンも撮りました。史進としては、もっといてほしい。
「先生は私の目標です。私はまだ学びたいのです。先生が私の前からいなくなられるなど、私には考えられません。私は…私は、先生と旅をしたい!!」(第3話より/脚本:藤沢文翁)。
でも、王母様に「私はそのようなことを教えましたか?」とピシッと言われるんです。年老いた父上を放り出していいの? みたいな言い方で。それで史進は父の史礼と二人で暮らすことにしたけれど、その後、父が亡くなって転機が訪れるんです。
久しぶりの王進先生との撮影は楽しくて、いいシーンになっているといいなと思います。
第6回[了]
ヘアメイク/齊藤沙織 聞き手・構成/タカザワケンジ



