大好評放送・配信中の
WOWOW×Lemino 連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』で

史進役を務める木村達成が、原作小説『水滸伝』を読む!

演じてみてわかった、史進像とは?
そして、ここまで読み進んできた木村さんから、
この壮大な物語を読むコツを教えてもらいます!

第4回

王進おうしん先生門下の長男、史進ししん

──そもそも木村さんが史進役を引き受けた時に、レクチャーみたいなのはあったんですか、『水滸伝』とは何か? みたいな。
木村 とくになかったですね。まず台本をいただいたので、史進という自分が演じる登場人物がどんなふうに描かれているかを読んで、「熱いな、面白いな」と思いました。
 ただ、自分が史進を演じている姿が想像できたかというと、そこまではいきませんでした。どういう作品になるかまだわからなかったこともありますが、僕自身が馬に乗ったこともなかったし、身体に刺青いれずみを入れる役をやったことがなかったので。でも、どうなるかはわからないけれど、面白くなりそうな予感がありました。

──台本のうしろには北方さんの長大な原作があります。この連載では木村さんにその原作を読んでもらっているわけですが。
木村 ドラマの撮影は台本をもとに進められていくので、台本をよく読むことが大事ですが、原作があるとその登場人物を理解する手がかりになりますよね。
 ドラマのオリジナル部分もあるので原作そのままではないけれど、原作の世界観を頭の中に入れておくことで、自分の史進というキャラクターづくりに役立っていると思います。
 北方さんの『水滸伝』とドラマの脚本の中の史進をベースに、そのうえで僕が考える史進の色も入れています。そうしないと僕がやっている意味がなくなってしまうので、どういう色を加えていくかということを意識しながら『水滸伝』を読み進めています。

──台本自体も北方さんの原作のキャラクターを大切にしているという印象です。
木村 監督始め、みなさんが原作を愛しているんだなと感じます。史進についても、子供っぽさがだんだん抜けて、成長していく流れがあって、すごく考え抜かれた演出になっていて、僕も納得して演じています。

──史進も含めてですけど、若いキャラクターたちが成長していきますもんね。
木村 二巻でも、ようやくではあるけど、徐々に史進が活躍し始めていますからね。メインのストーリーに参加できるのはまだもうちょっと先かなと思うんですけど。
 史進目線で言うと、二巻の前半の主役級の武松ぶしょうは、王進先生のもとに預けられますよね。王進先生の門下では、史進が一番早く弟子入りしていて、長男ポジションなんですよ。
 原作では史進の次に鮑旭ほうきょくがいて、武松がいる。そういう系譜があって、乱暴者が王進先生のとこで一人前の人間になっていく。そういうところも面白いですよね。
 一巻では無法者だった鮑旭も、二巻では王進先生のもとで真面目にやっている。史進は鮑旭、武松に比べるとちょっと優等生なところもあるなと比較して思いましたね。

──もともと育ちが良い。村の名主の跡取り息子ですから。
木村 そう。「いいとこの子」の要素が勝ってるなと思います。だから、不良だったかもしれないけれど、人間として壊れてはいないんですよ。いら立ちったり、悪態をついたりしますが、それは自分に対しての怒りだったりとか、もっと強くなりたいという気持ちのあらわれなんですよね。でも、武松は一度人間が破綻してしまっているというか。

──武松は過酷な体験をしていますからね。史進は家を継ぐという役割があったから、旅立つ王進先生を見送って、ちゃんとお父さんが亡くなるまで村にいるんですよね。ただ、農業に興味がないから父の跡を継いで村の保正になるのには向いていない。
木村 まだ若いから分別がつかないところがあるけれど、お父さんの史礼しれいが史進に期待していたことと、自分が向いているものが違うということも史進のいら立ちの一つだったと思うんですよ。自分は武術を極めたいのにお父さんは自分に村を治めてほしがっている。その葛藤はドラマでも描かれています(第六話)。
 少華山の盗賊三人組のうち、陳達ちんたつが手下を引き連れて史家村にやってきて、あっさり史進に倒されるんですよね。そこで史進が陳達を殺そうとする。そこへ魯智深ろちしんが来て、王進先生からの手紙を渡されるんです。
 ドラマではそうなっているんですが、原作を読むと、陳達がやってくるより先に王進先生からの手紙を受け取っているんですよね。でも、史進が王進先生から受け取ったメッセージは同じだと思います。

「武術が、武術としてだけで存在することに、意味はない。そう書かれていた。(中略)前を見て、世に出よ。そこで、身につけた武術がなんの役に立つか、考えてくれ」
(北方謙三『水滸伝』第一巻「曙光の章」集英社文庫 p.237)
木村達成
木村達成

推しのキャラクターを見つけよう

──史進はこの時が魯智深との初対面なんですよね。史進の目の前に現れた魯智深は「巨漢の坊主」で「挙措に隙がない」(第一巻「曙光の章」天微の星)。旅から旅へ、いろいろなところに出没して、いろいろな人たちをつないでいく。面白いキャラクターですよね。
木村 魯智深を演じている金児(憲史)さんが本当にぴったりなんですよ。スタジオで擦れ違ったとき、ああ、魯智深がいるって思いましたもん。人間が温かい。器のでかさとかが魯智深なんです、金児さん自身が。言葉の奥に隠れている何かを感じさせる、人としての奥行きをもともと持っている方だと思います。すばらしいキャスティングだなと思いましたね。

──二巻では、一巻に引き続き魯智深が生い立ちを語る場面がありますね。製塩所で働いていた父親が塩の横流しを疑われて首をねられ、母がそれを嘆いて死に、孤児になったと。そういう生い立ちがあって、ああいう魯智深像が生まれたんだなと。
木村 魯智深に限らず、原作には登場人物のバックボーンがしっかり書かれていますよね。「替天行道」の旗の下に集まってくる理由が全部見える。
 台本を覚えながら、並行して原作を読んでいるので、台本、原作と行ったり来たりしているんですけど、どちらも読めば読むほど味わいが深まっていくような気がしますね。台本でさらっと書かれていることでも、原作にはその背景までが書かれているので、ああ、こういう意味なのかと腑に落ちることが多かったです。
 僕の場合は史進ベースで読んでいるから余計にそう思います。ドラマでは描かれていないけれど、こういうことがあったんだ、と知ることで、史進の気持ちを想像して、演技に反映させることができる。読んでよかったなと思うことが多いですね。

──前回お好きだと言っていた医師の安道全あんどうぜんと、元盗人の白勝はくしょうは二巻ではどうでしたか。
木村 やっぱりいいキャラクターですよね。とくに白勝がよかった。白勝は一巻で安道全、林冲りんちゅうと脱獄した時に、安道全から命にかかわる大手術を受けて生き延びたことををきっかけに人間が変わる。二巻では、白勝が自分で自分の変化を自覚しているところがよかったですね。

「安道全は、兄弟以上なんだ。林冲は、血を通い合わせた友だちなんだ。この二人のためなら、命はいらねえ。山寨にいるなら、俺も山寨に入りたい。そのために、みんなに信用される仕事をしなけりゃならねえんだ」
(北方謙三『水滸伝』第二巻「替天の章」集英社文庫 p.226)

木村 林冲、安道全、白勝は、その関係がすばらしいなと思います。この濃いメンバーたちに埋もれないように、史進として自分の存在感を爆発させなくては、と思っています。ふわっと演じたら、ふわっと終わってしまうから、気をつけないと。

──一、二巻を読んで『水滸伝』の読み方のコツみたいなものは見つかりましたか。
木村 推しのキャラクターを見つけることだと思います。ストーリーを追うだけだと、時代も国も違うこの世界にすぐには入り込みづらいと思うんですよ。僕の場合は史進を追いかけているので、史進はいまどこで何をしているんだろう? と思いながら読んでいくと臨場感があります。  だから、これから読もうと思っている方は、北方さんならではの表現で描かれている「漢(おとこ)」たちの中で好きなキャラクターを一人つくるといいですよ。二巻だったら安道全や白勝だったり、顔が真っ白な公孫勝であったり、そういう不思議なキャラクターたちを推しとして見ることで、この物語の中にすっと入っていけると思います。

木村達成
木村達成、北方謙三「水滸伝」を読む。
第4回[了]
写真/矢吹健巳〈W〉 スタイリング/部坂尚吾(江東衣裳)
ヘアメイク/齊藤沙織 聞き手・構成/タカザワケンジ
大水滸伝シリーズTOPへ