2月15日からいよいよ放送・配信がスタートする
WOWOW×Lemino 連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』で
史進役を務める木村達成が、原作小説『水滸伝』を読む!
撮影裏話や水滸伝への想いなども交えつつ、原作小説の魅力に触れる読書連載。
未読の方はこの機会に木村さんと一緒に【北方水滸伝】に触れてみませんか。
撮りおろし写真も満載、木村達成の新しい一面も垣間見えるかも!?

初めての“北方水滸伝”
──北方謙三さんの作品を読まれたのは今回の『水滸伝』が初めてだそうですね。いかがでしたか。
木村 僕はもともとあんまり小説を読むタイプじゃないんです。子どもの頃も外で遊ぶのが大好きだったほうなので。
『水滸伝』を読み始めた時も、正直、最初はちょっと読みづらいと思いました。1巻読み終わるまでにどれくらい時間がかかるんだろうと不安で。でも、だんだんと物語にのめり込んでいって、読むスピードが上がっていきましたね。
──北方さんはそぎ落とした文章で人物を立たせていきますよね。登場人物たちのエピソードがそれぞれ面白くて。
木村 出てくる男たちがみんな「渇いている」と思いました。とくに最初のほうは潤いを求めて彷徨っているようなイメージですね。求めているけれど得られていない。素朴な感想ですけど、こんなにたくさんの男たちの渇きが書き分けられているのはすごいことだなと。
──しかも最小限の描写で想像させる。印象に残っているフレーズはありますか。
木村 各章の最初の一行がどれも印象的ですね。第一章(
第三章(天罪の章)は「舳先に立っていると、さすがに風が冷たかった」。前章とがらっと場面が変わって、河の上。船で荷物を運ぶ
──1巻で印象深い場面はありますか?
木村
言うと同時に、林冲は剣を抜き放っていた。
待てという男の言葉と、あなたという張藍の叫びが重なった。次の瞬間、林冲は男の躰を、頭蓋から両断していた
(北方謙三『水滸伝』第一巻「
頭蓋から両断ってどういうこと? って度肝を抜かれました。林冲の剣の冴えもすごいですが、何の
──心情をくどくど説明するような文章はないんですよね。
木村 だからこそどんな気持ちだったんだろうって考えるんでしょうね、読者は。その代わり、どんな動きをしたかが目に浮かぶように書かれているから想像できるんですよ。
小説と台本から見えてきた史進
──『水滸伝』の第一回目の撮影を終えたばかりだそうですね。撮影に入る前に準備されたことはありますか。
木村 まずは小説と台本を読むことですね。漫画だと登場人物の表情まで描いてあるので役をイメージしやすいんですが、逆に言えば先入観になってしまう。今回は小説と台本、つまり文字だけから想像して史進のキャラクターをつくり上げようと思いました。31歳の役者として、イメージをふくらませるところから役づくりをしてみたくて。漫画は撮影後に楽しむつもりです。
──小説と台本を読まれて史進の印象はどうでしたか。
木村 役柄の説明を受けた時には、ばか強い若者。でも幼心も持っている、真っすぐな青年だと聞いていました。
小説と台本を読んでいてもその印象は変わりませんでしたね。史進は本当に真っすぐなんです。分からないことがあったらなんでも素直に聞くようなタイプ。何で? どうして? って。そういう子どもみたいなところがある、教えてほしい若者なんですよ。でも周りに真剣に向き合ってくれる大人がいなかったから、どんどん乱暴者になっていった。
父親がお金で雇った先生たちは、史進を褒めそやすだけで、手を焼くことがあっても叱ったりはしない。史進は本当の「師」がずっと欲しかったと思うんです。自分を叱ってくれて、どんな質問にも真剣に答えてくれる本当の師が。
──乱暴者なんだけど、おぼっちゃまなんですよね。
木村 現代でもいますよね? そういう人って。恵まれて育ってるのにヤンチャしてるみたいな。
でも、父親の
史進が「入ってきた」シーン
──第一回目の撮影はどうでしたか。
木村 自分なりに準備はしましたが、撮影現場に入らないと役の本当のところはわからないというのが本音です。いざ衣装を着て、長い髪のかつらを被り、セットに入るという状況になって初めてわかることがあって。相手の方がどんなお芝居をされるのかでも変わってきますから。
キャラクターをつかむってすごく難しいんですよ。お芝居の神様がいるとしたら、ワンシーン目から僕にキャラクターを血液として流し込んでください、と思っているぐらいです。
でも、自分で言うのも何ですけど、今回はワンシーン目から、「あ、史進が流れ込んできたな」という瞬間があったんです。「史進が身体に住んでる!」と思えたんですよ。
──最初のシーンはどんなシーンだったんですか。
木村 史進の家にゴロツキたちが殴り込んでくるシーンですね。
その場には王進先生(演:佐藤浩市)のほか、史進の父の史礼(演:田中健)、
監督から、殺陣をつけてくださっているアクションコーディネーターの諸鍛冶(裕太)さんに、史進のアクションを増やして、向かってくるやつに思い切り飛び蹴りしてくれ、という注文があったりして、いきなり派手なシーンになりましたね。
いざやってみたら、雄叫びが「うわー!」じゃなくて、「うえー!!」ってなってたんですよ、自然に。「とち狂ってんな、俺」という感じで(笑)、自分でも演じながら心の中で笑ってました。
──最初からテンションが高いシーンだったんですね。原作小説では
木村 最初がそのシーンでよかったんです。王母様から字を習うシーンの撮影もあったんですが、そちらが「静」だとすれば、アクションシーンは「動」。先に「動」を演じられたことで、史進を自然にかたどっていくことができました。絶叫しながら飛び蹴りした時に「あ、史進が流れ込んできてくれた」と。そこからは流れに身を任せて演じることができました。
傷だらけになった殺陣シーン
──殺陣はいかがでしたか。
木村 史進は棒術の使い手なので、半年くらい前から棒術の練習をしていたんです。でも、現場に入ったら、稽古で使っていた棒の一・五倍ぐらいの重さで、しかも長い(笑)。だから距離感が分からなくなってしまって「どうしよう、これ」と最初は戸惑いました。常人じゃ振り回せないくらいの重さなんですよ。
──見た目は重そうでも実は軽い、というわけではないんですね。
木村 それをやると視聴者にわかってしまう。軽々振っていたら、軽いんだろうなとバレてしまうんですよ。
──なるほど。リアリティーを出すために。
木村 頭ではわかってたんですけど、いきなり渡されたので、「マジでこの重さ、長さ?」って。その代償がこれですよ(手のひらを見せる)。べろーんって皮がめくれていたんです。三回ぐらい振っただけで皮がむけました。
──しかも、相手をやっつけるだけじゃなくて、やっつけられもしますよね。地面に思いきり倒れこんだり。
木村 途中からマットは敷かなくていいですって言ったんです。そしたら全身で転げ回るシーンで、地面の小石なんかが背中に当たりまくって、傷だらけになりました。でも、その時は手当もできなかったんですよ。タトゥーが落ちてしまうから。
──史進は身体に立派な竜のタトゥーが入っていますよね。
木村 ヘアメイクとタトゥーを描いてもらうのに合わせて3時間ぐらいかかりましたね。
──セットはどうでした? 東映の大泉撮影所だったそうですね。
木村 作り込みがすごかったですね。セットにある調度品はどれも中国で購入した本場のもので、コンテナで何百個も運んできたそうです。スケールが普通のドラマとはぜんぜん違いますね。本棚に入っている書物、建物の瓦なんかもすべて中国から持ってきたと言っていました。
ただ、困ったのは砂ぼこり。セット内に大量に砂を運び込んでいるので、殺陣のたびに砂が舞い上がるんです。僕は殺陣ではだいたい叫んでいるので、砂が口の中に入ってきて、喉がおかしくなるかと思いましたよ。
──撮影初日、ほかのキャストの方はどうでしたか?
木村 さっき話した王進先生、史礼、王母様と、あと別のシーンで
みなさん、僕と同じで撮影初日だったと思うんですが、手探りなところもありながら、今までの役者としてのキャリアを背負って、この現場に戦いに来ているんだなと感じましたね。
とくに陳達、朱武、楊春は少華山に籠る賊徒で、役所を襲うために史進がいる
最初の撮影で感動したのはやっぱり王進先生役の佐藤浩市さんですね。いや、本当にすごい存在感でした。せりふ一つ一つがどれも温かくて、じーんと来ました。佐藤さんがいらっしゃるだけで現場も引き締まります。初日からすごくいい環境で撮影できたと思います。
第1回[了]
ヘアメイク/齊藤沙織 聞き手・構成/タカザワケンジ



