あらすじ ☆一進一退を続けるボンの容態に、落ち着かない日々を過ごす堀田家。しかしトラブルが起これば、すかさず助太刀参上! 高校卒業後の進路に悩む研人、「老人ホーム入居を決めてきた」と宣言するかずみ、そして長年独身を貫いてきた藤島が…。それぞれが人生の分かれ道に立った家族に、どんな未来が待っているのか?

 古書店〈東亰バンドワゴン〉を営む堀田家の日々をお届けする〈東京バンドワゴン〉シリーズも十四作目になりました。
 毎回この文章を書く度に思い、そしていつも同じ言葉で申し訳ないとは思うのですが、ここまで続けてこられるのも〈堀田家〉にLOVEを届けてくれる読者の皆さんや書店員さんのお蔭です。本当にありがとうございます。
 十四作目になる今回の新刊のタイトルは『アンド・アイ・ラブ・ハー 東京バンドワゴン』です。
 いつも通りに、前作である『ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン』のすぐ何日か後からの堀田家の四季の出来事を追う〈本編〉です。(このシリーズは〈堀田家の今〉を描く〈本編〉が三編続き、〈主に過去の時代の堀田家〉を描く〈番外編〉を一編挟むという形で今まで続いています。十五作目になる予定の次作も本編ですね)。
 本編は二作目以降ビートルズの曲名をタイトルしていますが、僕の中ではその巻の主題歌、テーマソングとして選んでいるという感じです。ビートルズナンバーを知らない方もその曲を聴いていただけると、より物語を楽しめるのではないかと思っています。
 この文を書いているのは平成三十一年の四月で、来月から年号が平成から令和になります。物語の中でほぼ毎回年齢を重ねていく堀田家なのですが、番外編を挟んだりしますので若干曖昧に書く部分もあります。年号が変わったことも、いずれ堀田家の出来事の中で語られていくでしょう。
 今回のタイトルである名曲『アンド・アイ・ラブ・ハー』の歌詞はタイトルそのままのラブソングです。
 彼女を愛している
 愛の全てを彼女に捧げる
 その愛はいつまでも変わらない
 シンプルな愛の言葉を、ビートルズナンバーの中でも屈指の美しい繊細なメロディで歌っています。静かな、そして思いを込めたナンバーでしょう。
 日々を重ねていくことで、あたりまえのように愛を捧げた人たちとの別れもやってきます。人生を全うして静かに去っていく人もいれば、自分の残り少ない日々を自分らしく生きるために別れを告げる人もいます。けれども、共に過ごした日々が、重ねた思いが、捧げた愛が消えるわけではありませんし、変わるわけでもありません。
 今作はそういう思いや出来事を、『アンド・アイ・ラブ・ハー』の美しい静かな旋律に乗せて、いつもよりは幾分しっとりした雰囲気の中で物語を編んでみました。堀田家の家族からまた一人、家を離れていく人も出てきます。もちろん、その中でも若者たちの成長やいつも通りの賑やかな毎日も描いています。
〈東京バンドワゴン〉は、テレビの〈ホームドラマ〉に捧げた、堀田家とそこに集う人たちの物語です。多少ドタバタしたり大げさだったりしますけれど、きっと皆さんの人生とそんなに変わりない日々が、いろいろあっても最後にはいつも笑顔になって綴られていきます。
 その堀田家の皆の笑顔が、皆さんの日々の暮らしに楽しさや明るさを少しでも添えられればそれだけで幸せです。よし、明日も頑張ろう! と思っていただければさらに嬉しいです。
 どうぞ今回も堀田家をよろしくお願いします。