東京バンドワゴン
20周年
【第20弾】

ザ・ネバーエンディング・
ストーリー

表紙
ストーリー
【人気シリーズ、ついに辿り着いた第20弾!】
舞台は、昭和60年(1985年)。 最近、幼稚園児の青が楽しく読んでいるのは、〈東亰バンドワゴン〉の蔵で見つけた『不一魔女物語』という本らしい。
原書はイギリスの稀覯本で、最近日本人に落札された。その額、なんと3000万! その幻の古書を、古美術窃盗団が狙ってる!? そして、青をつけまわす怪しい人物まで出てきて……。
我南人の今は亡き妻・秋実も活躍する番外長編。
目次

Prologue

Introduction-1 堀田秋実

Introduction-2 堀田藍子

第一章 The Little Prince

第二章 Little House in the Big Woods

第三章 The Neverending Story

Epilogue

著者メッセージ

 東京のやたらお寺が多い辺りの下町で、古書店〈東亰バンドワゴン〉を営む堀田家の日々を毎年の春にお届けする〈東京バンドワゴン〉シリーズ。
 なんと今年でついに二十作目になりました。
 一作目の『東京バンドワゴン』を書いてから二十年が過ぎてしまったのです。偶然ですが私は四月生まれで、当時四十五歳の中年のおっさんだった私もこのシリーズと一緒に春に年を重ね、ついに高齢者の仲間入りをするまでになりました。
 毎回同じ感謝の言葉を並べるしかないのですが、続けさせてくれる集英社の〈チーム東京バンドワゴン〉、応援してくれる書店員さん、何より春の発売を楽しみにしてくれている読者の皆さんのお蔭です。本当に、ありがとうございます。
 このシリーズは〈堀田家の今の一年〉を描く〈本編〉が三作続き、〈主に過去の時代の堀田家など〉を描く〈番外編〉を一作挟むという形で続いています。二十作目の今回は四年に一回の〈番外編〉です。(なお、江戸を舞台にした『隠れの子 東京バンドワゴン零』もシリーズのひとつです。主人公である堀田州次郎とるうは堀田家の直接のご先祖で、州次郎は堀田勘一の曽祖父、ひいおじいちゃんです)。
 そして、物語の中ではほぼ毎年ひとつずつ年を重ねている〈堀田家〉ですが、二巻に亘って同じ季節を重ねつつさらに〈番外編〉を挟んでいきますから、登場人物たちは皆さんよりも数年前を生きていることになっています。
 二十作目になる今回の新刊のタイトルは『ザ・ネバーエンディング・ストーリー 東京バンドワゴン』。
 番外編なのでビートルズナンバーではありません。ミヒャエル・エンデの名作小説『はてしない物語』の映画化作品〈ネバーエンディング・ストーリー〉の主題歌が〈ザ・ネバーエンディング・ストーリー〉です。
 物語の舞台は、その映画〈ネバーエンディング・ストーリー〉が公開されたのとほぼ同じ頃、一九八五年(昭和六十年)の堀田家。我南人と秋実の長女藍子はまだ中学一年生、長男の紺は小学六年生、そして次男の青は幼稚園児です。そう、堀田家の三姉弟が子供の頃のお話なのです。
 その当時のことを書こうと思ったのは、番外編『ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン』を書いたときでした。それは我南人の妻であった秋実が堀田家と出会ったときの物語ですが、秋実が文字通り〈堀田〉として過ごした日々のことは描けていません(ちょっとだけ触れましたが)。ならばいつかそれは番外編として書かなきゃならないと考え、この記念すべき二十作目の番外編でと決めました。
 本編では一作目で既に大人で、花陽や研人、後にかんなや鈴花の父母たちとなっている藍子・紺・青の三人がどんな子供だったのか、母の秋実が生きているときにはどんな母親だったのか、どんな騒がしい出来事があったのか。それを描こうとしました。
 本編では、サチと秋実が既に故人となっているのですが、この物語では二人とも生きています。つまり全員が〈堀田家〉として揃って活躍するのはこの物語が初ということになりますね。
 元々は児童養護施設で育った秋実。我南人と結婚して藍子に紺、そして青が生まれてきて三人の母親として賑やかな日々を過ごしていたのですが、ある日に刑事さんがやってきて物騒な話を聞かされます。さらには紺が、青が誰かに見張られているみたいだと言い出し、そこにかつて一緒に施設で育った男の子がやってきて驚くべき話を聞かされ……。
 ちょっとだけ裏話をしますと、本編でも活躍してくれていた元刑事の茅野さん。この物語で現役の刑事として重要な役割を果たしてもらおうと考えたのですが、いやちょっと待てよ、と過去の物語を調べると、時期的に茅野さんがまだ堀田家と出会うちょっと前だったのです。なので茅野さんにはちょっと裏に回ってもらって名前だけが出てきます。

〈あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ。〉
 毎回巻末に示す通り、〈東京バンドワゴン〉はテレビの〈ホームドラマ〉に捧げた物語です。
 毎回、堀田家とその周辺で繰り広げられる出来事は、エンタメドラマの常として大げさに大仰に描いてはいますが、家族で暮らしている普通の方々のところでならいつでも起こりうるような話ばかりです。驚いて、泣いて、騒いでどたばたして、けれども最後には皆で笑って終わる。「あぁ、おもしろかった!」ただそれだけでいい。あるいは「明日も頑張ろう!」と、ほんの少しでも明日への希望や活力を残してくれればいいという思いで書いています。
 そして、書き続けます。
どうぞ今回も堀田家をよろしくお願いします。